拘束時間を改善
2時間ごとに10分の休憩時間を用意しているところが多いとはいえ、トイレなどの緊急事態で作業を止めざるを得ないこともあります。
働く人を守るための法律「労働基準法」では、労働時間が6~8時間の場合は45分以上の休憩時間、労働時間が8時間を超える場合は1時間以上、また労働時間が6時間以下の場合は休憩なしと定められています。
その労働基準法では、一斉就業・一斉休憩が原則なので、ライン作業で動いている工場などでは、休憩は一斉に取ることが多く、休憩時間になると一度ラインを止めるところが一般的で、2時間ごとに10分の休憩時間を用意しているところがほとんどのようです。
とはいえ、トイレなどの緊急事態で作業を止めざるを得ないときはどうしたらよいのでしょうか。これから工場での勤務を考えている方にとってはとても不安になる問題です。このページでは、拘束時間の改善に成功した企業の事例をもとに、実際に行った改善方法をご紹介しています。
事例
ライン作業で動いている工場。2時間ごとに10分の休憩時間を用意していたが、急なトイレ休憩などで、作業が一時的に中断することも多く、生産性が落ちる。また、こうした原因や拘束時間の不自由さから離職するケースも多い。
改善方法
急なトイレなどに対応できるように、ライン外で作業するリリーフ(ライン管理者)の配置に余裕を持たせたり、すぐに呼べるように呼び出しボタンをラインの近くに設置したり、といったフォロー体制を用意することで、作業が中断することもなく、働く人の精神的負担も軽減させることができました。
また、工場内のトイレの数が少ない事業所などでは、待ち時間が余計にかかってしまい、休憩時間にトイレに行けなかったということもあるので、十分な数を用意することも必要になるかもしれません。
離職した原因のなかでも、比較的多いのが労働環境への不満。若い世代ほど労働環境面に多く不満を感じているという調査結果もあり、ネガティブなイメージを払拭するためにさまざまな取り組みを行っている会社もあります。
しかし、こうした事例からもわかるように、改善に必要な要望を汲み上げることも重要な問題です。気軽に相談を行えるツールとして、またコミュニケーションの活性化のために、社内SNSなどを利用するととこも増えてきているようです。
拘束時間・労働時間・休憩時間の定義
派遣社員の労働について考える上で、拘束時間・労働時間・休憩時間がそもそもどのように定義されているのか、きちんと把握しておくことが重要です。
まず、労働時間とは文字通り、労働者が実際に労働している時間や、業務上必要な作業や準備などを行っている時間を指します。例えば就業前の朝礼や作業後の後片付け、さらに安全管理として指示される休息や過眠も労働時間として計算されます。
次に休憩時間は、使用者の監督下にあるものの、自由に労務から離れられる時間です。つまり、休憩時間と休息時間(労働時間)の違いは、派遣社員が過ごし方を自由に決められるかどうかという点です。仮に安全管理として必ず休めと指示されれば、それは労働時間となり、休憩中に自主的に勉強している場合、それはそのまま休憩時間となります。
最後の拘束時間は、使用者の監督下にある時間の合計であり、労働時間と休憩時間を合わせたものになります。
労働基準法では拘束時間に関する規定がない?
労働基準法は、労働時間の上限や休憩時間の下限について規定しているものの、特定の業種を除いて拘束時間に関する規定がありません。
そのため極論すれば、休憩時間を非常に長く取ることで、給料の額をそのままに労働者を長時間ずっと拘束することも可能ということです。
ただし、実際にそのようなことを行えば、従業員の不満やストレスが増大し、離職率が高まってしまいます。なぜなら、労働者にとっては会社に拘束されている時間そのものが「仕事」として感じられやすいからです。
例えば、自分の仕事が先に終わっているのに、同僚や先輩などがまだ仕事を続けているせいで何となく雰囲気的に帰りづらく、することがないまま職場に残っている労働者は少なくありません。しかしそのような場合、先輩や上司に残業を指示されていないのであれば、会社としてはあくまでも社員が自主的に社内に残っているだけという建前が成立します。
社内のコミュニケーションの活性化が大切な反面、これはしばしば日本企業の悪しき風習として問題視されることも多く、特に若い世代にとって大きなストレスとなっているケースが多いようです。ましてや、そもそも会社に対して帰属意識の少ない派遣社員であれば、そのような環境を嫌って離職しやすくなるでしょう。
派遣社員への残業指示には事前の契約が必要
派遣社員の労働については、全て事前契約と就業条件明示書によって内容が定められています。そのため、事前契約で時間外労働を可能にする「36協定(さぶろく協定)」が締結されており、さらに業務についてあらかじめ時間外労働有と明示されていなければ、そもそも派遣社員に残業を指示することもできません。
また、フレックス制や変形労働時間制といった特殊な形態についても同様に、就業規則に明記した上で、派遣会社や派遣社員らとの間で事前契約を交わしておくことが必要です。